MIU404 2話

2話 切なる願い

 

 導入は通常密行終了から。

 404のリズミカルに進む会話が心地よい。

 伊吹の飄々とテンション高めの表情と口調から、ごっそりと感情が抜け落ちる演技すごいと思う。脱線していく雑談から、1日で廃車にしてしまった機捜車の話題に持っていくのも楽しい。

 突如「俺を殴ったよな?」と真摯な顔になって、志摩に告げるのが先程までの陽気な空気が変わっていくのがいい。そこからその空気を引き摺らずに明るく謝罪を要求する伊吹がまた彼のおおらかさを感じる。

 志摩が伊吹を殴ったのって銃を撃つフェイクをされて自分も騙されたからだったんだろうか。

 

 メロンパン号になった経緯の件、車貸してくれると思う?と桔梗さんに聞かれて、二人の運転っぷりが回想されて笑った。どっちも荒々しすぎる。

 桔梗さんと404のコンビも好きで、「よくそんな口が回るよねー」に「ねー」と便乗する桔梗さん、大好き。伊吹を甘やかさないでと叱咤する志摩は飼い主にしか見えない……。でもぺらぺら桔梗に向かって言い募る志摩を見る桔梗の顔は呆れ顔でもあったから伊吹と同じ感想を抱いてたんじゃないかと思う。

 陣馬さんに「コーヒー桔梗に持って行って」と素直にコーヒー持っていく伊吹わんこ。基本素直なんだよなぁ。ちょっと直情的なところがあるが玉に瑕なだけで。

 

 密行中にまるごとメロンパンのやりとりから、自然と事件を目撃する流れが凄い。

 あの一瞬で袖だけ見える伊吹の動体視力よ。

 「袖だけ」と「それだけ」を掛けてもいるんだろうか。

 志摩と伊吹の会話のテンポがリズミカルすぎて心地よいし相性最悪に見せかけて仲良しだなと実感する。「走る人質監禁立てこもり?」の語感の良さとうんうんうん!と何度も首を縦に振る伊吹のわんこみが可愛い。

 ほんのちょっとの違和感を一蹴して終わりではなく隊長に進言する志摩を見つめる伊吹の眼差しとか表情にちょっと泣きそうになる。驚きから正面を見てにまにまと笑みを隠し切れないのに変わるのが。

 今まで言っても一蹴されて終わりだったのかもしれない。

 容疑者を見つけたかもと進言する志摩の言い回しに対して桔梗さんの「ふんわりしてんな」という言い方も好きすぎる。

 

 検問を通して、404のちょっとずつ距離が縮まっていくところ、伊吹みたいに頬が緩む。

 401も404とはまた違った凸凹コンビ感が愛おしいなぁ。404は性格違うようにみせかけて根本は一緒だけど、401は年齢もキャリアも考えも違っているからこの二人のやり取りは最初距離があるしと違いを感じていくのも面白い。

 九重の口から出る、志摩の相棒殺しと伊吹の誰も信じてくれなくて腐ってた時に信じれる人に出会った話、今後の回を思うと感慨深いものがあると全話見てから改めてみると色々気付けるね。

 「俺の事信じてくれてもいいんだぜ?」と軽い口調で言う伊吹にちょっとだけでも志摩は心揺り動かされたりしたのだろうか。にしても、身体動く派だからかひょこひょこ落ち着かないから見ていて楽しい。

 

 志摩も隠れ実力行使派だよな。突発に行動して、平然と嘘を言い放ちトランクを開けさせてボイスレコーダーしかける豪胆さよ。サントラの伊吹藍も流れるとき好きなんだけど、サントラの志摩一未も絶妙な時に流れて、すごく好きだったりする。

 さらりとボイスレコーダー仕掛けては容疑者確認したり荷室確認したりと観察眼抜かりない。

 伊吹の携帯取り出すときにポケット探っただけで過剰すぎる反応されたから、伊吹はくすぐったがりなんだろうか。

 

 加々見の身の上話、色々と切ないものがある。親がどうしようもないとつらいよね。そこから身一つで飛び出せる勇気もあるのが凄い。私も独り立ちするときお金なさすぎて最初はしんどかった。

 後岸のアカウント、身バレものともしないのに吹いてしまった。でも若い人らって名前本名でやっているし、そういうのもリアルなのかもしれない。

 伊吹の加々見に感情移入してボイスレコーダーを通して同意しちゃったり、岸が首になっちゃったのに対して驚いたりと感情表現豊かなのよなぁ。

 刑事なのに職質受けたり(グラサンしてると余計雰囲気が怪しいので致し方ない気がするけど)刑事は疑う事だという常識を笑って蹴飛ばしたり、常識外れな警察官なんだけども、そこでも胸の中にひっそりと息衝くとても大切なことを持っている伊吹の真っ直ぐな部分を横で見て、志摩はどう思ったのだろう。

 ひたすらに優しくて甘い伊吹だけど、誰も信じてなんかやらないと思って生きていて恩師に出会ってその中で築きあげた「信じてあげたい」という気持ちは柔らかくていて眩しい。

 

 そんな甘っちょろいゆるふわな思いを受け取って、上司である桔梗さんからかかってきた無線を投げやりでとっちゃう志摩に笑った。桔梗さんの「は?なにそれ?」も圧が強い。やり直す志摩の声のイケメンさよ。

 

 過去の後悔を清算するかのように、田辺夫妻は加々見を信じたい。その感情のバイアスが強くなりすぎているのかもしれないね。

 出頭を促す伊吹に、逃げろ!と加々見を手助けしてしまう田辺夫妻に取り逃がす404がお互いバカ!と罵り合ってるのちょっと笑ってしまう。完全に油断していたやつ。

 志摩の「人は信じたいものを信じる」が胸にくるものがある。

 「俺はやっていない」の言葉の重みがとても苦しい。後者の、犯人がやっていないと信じたいからはあるよね。特に衝動的に行ってしまった時なんかは。

 志摩の言葉を聞いて助手席で見えないように涙拭って田辺夫妻の方を見て「どこいったか教えて ちゃんと教えて」と訴える伊吹にも胸に去来するものがある。

 自殺するかもと示唆されて行き先を早苗さんが伝えたのは、自分の息子のこともあって最悪な事態を免れてほしいという思いがあったのかもしれない。

 神妙な面持ちで運転する伊吹に追い打ちをかけるように、血の掌紋は加々見だと聞かされて、怒りと悲しみが混ざり合った顔でシフトレバーを動かすのがBGMと相俟って切なさが加速していく。

 

 ただただ、父親に謝ってほしかっただけなのにそれと似たような性格のどうしようもない上司に衝動的とは言え、台無しになってしまった加々見が悲しくてそれでいて苦しい。

 我に返って上司の蘇生を試みようとする基本は心優しい青年なのに。親からの虐待ともとれる躾と、上司のパワハラが結びついてしまったのが。

 

「お前 バカだなぁ! 殺しちゃダメなんだよ なっ

 相手がどんなにクズでも どんなにむかついても殺したら負けだ 

 無実でいてほしかったな」

 

 伊吹の訴えが今後の回に響いてきてしんどくなります……殺したら、負け。

 泣いている加々見に対して頬を添えて本音をほろりと零すのが、また悲しい。信じていたのに。

 最後、手錠を渡されて信じていたかった容疑者に手錠をかけなければいけない重たさも余計に切なく感じる。志摩の非情でいて伊吹の事を慮っている思いも色んな感情が交錯してしまう。

 田辺夫妻の息子にずっと言いたかったごめん。

 父親にずっと言ってもらいたかったごめん。

 

 この時、ちょっとでもお互いの悲しかった思いは消化されたのかな。

 

 

 404のもぐもぐタイム

 乾麺の事、乾いたのっていう伊吹よ~~~。

 1話終盤から引っ張っていた伊吹へのごめんという謝罪も2話で回収する脚本の上手さに唸った。

 小言の一つでも言われるかと思っていたから、唐突な謝罪に驚きから嬉しさを堪えきれない変な顔になってる伊吹可愛いけど笑う。茶化すように「志摩ちゃん!?」と言うトーンの高さ好き!

 距離が縮まっていく404なのに時は戻らず、人の命は帰らない。志摩が何を思って何を感じて伊吹に告げたのか、ちょっと不穏な終わりが怖い。